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「説明する」ことを軸に、世の中に存在していないプロダクトを - 金子侑輝インタビュー

公開日:2025年6月5日

LIBER STUDIO の関係者に話を聞いて、会社の雰囲気や “中の人” の素顔を様子をお伝えする本企画。初回は、2023年に新卒入社して、現在はニュース解説メディアの The HEADLINE で中心的な役割を担う、金子侑輝にインタビューします。インタビュアーは、代表・石田です。

― 現在リバースタジオでどんな仕事をしていますか?

大きく2つあります。1つは、ニュースサイトの The HEADLINE での記事執筆や編集業務です。もう1つは、情報収集 SaaS の Insights で、データ投入であったり事務的なサポートをおこなう業務です。

― 新卒で LIBER STUDIO に入社した経緯を教えて下さい。

遡ると、2019年に代表である石田さんのことを個人的に知った経緯があります。具体的には、(当時、石田が個人的に運営していた)The HEADLINE の記事を読んだことと、YouTube を見たことがきっかけで、その後個人的に連絡を取ってからお会いして、何か記事を書かせてもらえませんか?と頼んだことが始まりです。

― 懐かしの高田馬場のタリーズ。笑

はい。笑

― その時は学部生でしたよね、入社前の経歴も教えて下さい。

はい、当時は早稲田大学の3年生でした。

大学入学後、色んな授業を取っていく中で、それまでは「メチャクチャ本を読むタイプ」というわけではなかったのですが、ギリシャやイギリスの思想家や研究に触れるうちに「なんか面白いな」と思い始めて、その頃から本や研究を読み漁るようになりました。

そこから、海外の研究者が凄いスピードで新たな研究を生み出す様子を見て、彼らが何を考え、どう過ごしているのかに興味が出て、学部3年生の時、オーストラリアのアデレードという小さな街に1年間留学していました。元々関心があった政治学や哲学の講義も取っていましたが、「オーストラリアと言えば人類学だろ」と思って、人類学など幅広く講義を取っていましたね。

留学時代、メルボルンの刑務所体験ツアーに参加した金子氏。オーストラリアは19世紀にかけて、大英帝国の流刑地として機能していた。
留学時代、メルボルンの刑務所体験ツアーに参加した金子氏。オーストラリアは19世紀にかけて、大英帝国の流刑地として機能していた。

アデレード大学では、義務投票制を研究しているリサ・ヒル教授の講義も取ったのですが、The HEADLINE に同制度の解説記事があり、ヒル教授の研究にも言及されていたことで、初めて石田さんとメディアを知り、興味を持った形です。

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― ここで言及した研究は、『アゲインスト・デモクラシー』で知られるジェイソン・ブレナンとの共著なんですね。

そうなんです、面白いですよね。

― 義務投票制の記事は、筆者の感想が入っていたりして、今のレギュレーションだとダメな記事ですね。笑 大学院では何を研究していましたか?

簡単に言うと、海外の貧しい人たちに寄付すべきなのか、我々はそうした道徳的義務として「寄付する義務」を負っているか、という問いを考えていました。

― The HEADLINE でも記事が出ている効果的利他主義ですね。最近は、AI やテクノロジーとの関係でも話題ですね。

そうですね。

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いまでも効果的利他主義の議論は追っていますが、弊社でもよく話題になる AI とテクノロジーとの関係については、とても興味深いと思っています。

大きく2つあり、1つはテックと思想が融合している状況そのものの興味深さ、もう1つは大学院で研究している時は、効果的利他主義がテック業界から現在のような注目のされ方をするとは、正直そこまで思っていなかったので、その意外性という意味もあります。

― そこから LIBER STUDIO に入社するわけですが、どんな理由がありましたか?

大きなところは、最初に石田さんに連絡した時から変わっていません。

大学院に入ってから、最初は「ついて行けないんじゃないか」ぐらいのハイレベルな議論が先輩間で交わされていて、「凄いな、この人たち」というのが正直な感想でした。

ただ一方で、これだけハイレベルな議論、ある種の「知の生産」が身近で為されているのに、それが社会に全く還元されていない状況に、単純に勿体無さも感じました。自分は、もしかすれば知を生産する側には回れないかもしれないけど、その生産されたモノを消費して、何か流通させることが出来れば、それは凄く有益だし、単純に面白そうだな、と考えていたんです。

なので、石田さんの事業はずっと頭の片隅にあって、大学院でその想いがより強くなったことが理由ですかね。

― いい話だ…。笑

アカデミックにいる人たちも、もちろん現実社会を完全に無視している人は非常に少ないと思いますが、知の流通という点において、なかなか影響力を持てない問題はありますよね。逆に届ける側、つまりメディア側としても、届ける力はあっても、アカデミックで生産された知を適切に理解して届けることは、内容の理解という意味でも、商業的な合理性という意味でも難しさはありますよね。

代表取締役・石田と社外取締役・桂と話す金子氏。(YouTubeより)社内でも効果的利他主義の話や「知の生産」に関する話題はよく出てくる。
代表取締役・石田と社外取締役・桂と話す金子氏。(YouTubeより)社内でも効果的利他主義の話や「知の生産」に関する話題はよく出てくる。

― そんなことを考えながら入社して1年が経過しましたが、何か変化はありましたか?

The HEADLINE の記事自体は入社以前から書いていたので、その点について、あまりイメージは変わっていません。ただ読者にどう記事を読んでもらうか、といった考え方などは、入社してから毎日、石田さんとコミュニケーションを取る中で、背景にある思考とか思想が分かってきた点はあります。

それから、会社や媒体に紐づく数字も毎日を見るようになったことで、その意識や視点が増えたことは、入社前後の大きい変化だと思いますね。

自分たちがつくらなければ世の中に存在していないプロダクトをつくる

― 先ほど話した、知の流通という点と絡めると、そうした理念的なものと経済的な合理性を両立させる難しさはありますか?

まず前提としては、自分は「自分が作りたいモノを作る」という感覚はあまり無いんですよね。The HEADLINE の記事もそうですが、自分の書きたいことやオピニオンを書くわけではなく、あくまでも社会的な変化やニーズとのすり合わせの中で生まれています。

ただ同時に、それが「自分の仕事か」という点は考えています。たとえば世の中のニーズが存在しても、自分にとって理念的なものや興味関心の範疇と距離があるものであれば、少し傲慢かもしれませんが「自分の仕事ではないな」と感じるタイプです。その意味で、The HEADLINE や Insights がやっていることは、おそらく自分たちがつくらなければ世の中に存在していないプロダクトだと思っていて、そこは意識しています。

The HEADLINE はニュース解説という独特の立ち位置にいますし、Insights に関しては AI をめぐる環境の変化によって初めて可能になった領域だと思っており、そこが自分としては意義やチャンスが大きいなと感じています。

― なるほどなるほど。チームの雰囲気やカルチャーは、どのように捉えていますか?

まず大きな点は、各々のメンバーが最大限のパフォーマンスを出せるように、自主性や主体性が求められるチームだという印象です。他のメンバーは自分より先輩なので、キャリアの長さや双方の信頼関係があることも関係しているのだとも思いますが、仕事のやり方や稼働スタイル、休憩など含めて個人に任せられている感じはありますね。

それから、業務やプロダクトのフィードバックと人格の尊重が、きっちり分かれていることも大きいですね。

The HEADLINE の記事にしても、Insights の機能にしても、「ここは違うんじゃない」とか「ここはこうした方がいいよね」みたいな話が日常的に出てきますが、それを言われたからといって、別にあなたの人格を否定してるわけじゃないですよ、という前提が共通認識としてあります。だから自分も、石田さんの記事をチェックする際には「ここは分かりにくいです」とはっきり言いますし、プロジェクトと人格を切り離す意識が浸透していますね。

― たしかにそこは弊社っぽいですよね。

そういった点を含めて、プロフェッショナル意識というか、そういったものはチーム全体にあると思います。自分としても、The HEADLINE の記事を書く上で、自分の名前や顔を出して中途半端なものを出すのは嫌だなという意識はあって、それは批判されたり叩かれることの恐怖というより、責任感と言うかプロとしての自負を持ちたい、という感覚に近い気がしています。

― なるほど。会社や組織の論理で動いているというよりは、社会との関係の中で自分たちの仕事を定義していると言うか、その緊張関係を意識している感覚はありますね。

そうですね。個人や企業として出来ることには、ある程度の限界もあると思っているので、その意味で、ストレートに「社会を良くしたい」という意識があるというよりは、結果的に社会に良い影響が生まれたら良い、という感覚に近いかもしれません。

― 社会を変化させたり作用を生み出したいという意識より、社会の構造的な変化そのものに関心があるんでしょうね。経済がマクロでどうなるとか、テクノロジーがどうやって社会の変化に寄与するのか、みたいな現象そのものに関心があるというか。

そうですね、これはまさに The HEADLINE でオピニオン記事があまり出ないことと関係がありそうですね。その良し悪しはさておき、社会運動が起こってる時、運動には参加しないけれども、その変化には関心があり、それを記述するというか。

我々はサム・アルトマンの(構想するような)世界で生きている、という現象を捉えて、その背景や生み出される結果について、説明的な記事を書いていく感じですね。

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「説明する」ことが根底にあるカルチャー

― たしかに。そうした点が、チームの雰囲気やカルチャーを定義してそうですね。

やっぱり「説明する」ことが根底にありますよね。まだ掘り起こされていない事実や、ある種インビジブルな問題、気付かれていない側面があったり視点が抜けている論争を、時には重箱の隅を突いているような部分がありながらも、何かを説明することに意義を見出しているんでしょうね。

その事象に対して意見表明するかは次のフェーズであって、まずは説明しようという姿勢を重視しているのだと思います。

― それが必ずしも常に社会を良くするわけではない、という緊張感もありますね。

そうですね、言ってしまえば、時には悪くする局面もあるかもしれません。これは無責任と言われればそうかもしれませんが、ある種、議論のアジェンダを設定したり、過去の議論の流れを整理したり、議論のテーブルに載っていない論点を見つけたり、テーブルの形式そのものを問うてみたり、それが結果的に良くない影響を生み出す可能性はゼロではないでしょう。そういう意味では、社会を良くも悪くもする危険性は孕んでいるはずです。

もちろん、意図的に悪く作用することがないように留意していますが。

― それは The HEADLINE でも Insights でもそうですよね。あくまでデータを集めたり、事件・事故に関する情報を届けることが我々の仕事で、その先に、その情報やデータ、ニュースを使ってどういうビジネス上の意思決定をするかは会社ごとに違いますしね。

個人的には、Insights は交通整理をおこなっている感覚に近いですね。Insights では企業ごとに必要な情報を最適化させたフィードを届けていますが、そうやって提供される情報は、あくまで意見表明やオピニオン、あるいは意思決定の前にあるべき情報の整理なのだと感じています。

― 昔は、そうした仕事をテレビや新聞が担っていましたが、現在はそれだけでは扱い切れないほどのデータや情報が存在しており、そうした交通整理をおこなうプレーヤーもいないのでしょうね。

そう思います。チームの雰囲気やカルチャーの話に戻ると、そういった仕事が好きで、価値を見出している人が集まったチームだと考えています。

― なるほど。最後に、どんな人と一緒に仕事がしたいですか?

ここまで話したような考え方や価値観は前提として、ハッピーそうな人ですかね。

プロジェクトと人格の分離みたいな話をしましたが、プロダクトを作るとか業務に集中するとかは普通にプロフェッショナルとして真剣にやっていくものの、それが関係ない文脈では、冗談を言い合うとか、逆に言えば、プロダクトとかに真剣に取り組むために、それ以外ではちょっと適当な感じで過ごすような温度感も大事だと思っています。

平日頑張って集中して記事書いたり、良いパフォーマンスを出すために、ちゃんと休むという・・・当たり前な話ですかね?笑

― 一見当たり前に見えますが、この会社は外部からのイメージと実態で、そういうギャップは持たれてそうですよね。俺もTV出演を見てくれる人から、「もっといけ好かない人だと思っていました」と言われますし・・・笑

そうした切り替えというか、緩急は大事ですよね。外から眺めると、一見すれば一貫性がないようにも見えるんですけど、人格の複数性というか、意外な一面も含めて、その人間性を楽しめるような仲間が集まるのは良いことだと思います。

― 本日はありがとうございました!

ありがとうございました!

金子侑輝 / The HEADLINE シニアリサーチャー 2023年、株式会社リバースタジオ入社。主に、ニュース解説メディア The HEADLINE で執筆・編集などを担当。早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。

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